配偶者の相続税はどのくらい?1億6,000万円控除の仕組みと要件を解説

- 配偶者は正味の遺産額が1億6,000万円までなら相続税がかからない。
- 1億6,000万円を超えても、法定相続分相当額までは相続税がかからない。
- 税額がゼロでも、配偶者の税額軽減を使うには相続税の申告書の提出が必要。
- 相続税の申告期限は、相続開始を知った日の翌日から10か月以内。
- 申告期限までに遺産分割が終わっていないと、原則この軽減は受けられない。
配偶者 相続税 どのくらいの結論

配偶者が取得した正味の遺産額が1億6,000万円以下であれば、配偶者の相続税はゼロになります。
この仕組みは「配偶者の税額軽減」と呼ばれます。国税庁の案内では「配偶者には相続税はかかりません」とまで書かれているほど、強力な制度です。
非課税になる範囲は、次の2つのうち多い金額までです。①1億6,000万円、②配偶者の法定相続分相当額。つまり、遺産が3億円あって配偶者の法定相続分が2分の1なら、1億5,000万円まで……ではなく、1億6,000万円のほうが多いので1億6,000万円までが非課税になります。
私が事務所にいた頃、この制度を知らずに「妻にも相続税がかかるんですよね?」と青ざめて来られる方が本当に多かった。実際は、ほとんどのご家庭で配偶者の納税額はゼロになります。
動画で分かりやすく解説しています!▼配偶者が得られる相続税の優遇措置
配偶者の税額軽減は、文章だけでは「結局いくらまでゼロなのか」が掴みにくい制度です。

ポイントは「1億6,000万円」と「法定相続分」のどちらか多い金額まで、という比較の考え方にあります。ここを押さえれば、ほとんどのケースで答えが出せます。
以下の本文では、この比較の仕組みと計算式を、実際の数字を当てはめながら順番に整理していきます。
1.1億6,000万円まで控除される配偶者控除とは
配偶者控除(配偶者の税額軽減)とは、配偶者が取得した正味の遺産額が1億6,000万円までなら相続税をゼロにできる制度です。
非課税になる上限は、次のどちらか多いほうの金額です。①1億6,000万円、②配偶者の法定相続分相当額。法定相続分相当額が1億6,000万円を超えるような大きな遺産でも、法定相続分の範囲内なら配偶者の相続税はかかりません。
計算は、相続税の総額に対して配偶者が負担する割合を出す形で行われます。具体的には「相続税の総額 ×(①または②のうち少ない金額)÷ 課税価格の合計額」で、配偶者の軽減額を求めます。
| 比較する金額 | 内容 |
|---|---|
| ①1億6,000万円 | 固定の上限額 |
| ②法定相続分相当額 | 遺産全体に配偶者の法定相続分を掛けた額 |
なお、ここでいう「正味の遺産額」には、実際に取得した財産だけでなく、生命保険金などのみなし相続財産や、一定期間内の贈与財産も含まれます。
1-1.配偶者の法定相続分とは

配偶者の法定相続分とは、誰と一緒に相続するかで決まる、配偶者の取り分の目安です。
民法で定められた割合で、子と相続するなら配偶者は2分の1、父母などの直系尊属と相続するなら3分の2、兄弟姉妹と相続するなら4分の3になります。
| 一緒に相続する人 | 配偶者の法定相続分 |
|---|---|
| 子 | 2分の1 |
| 父母など直系尊属 | 3分の2 |
| 兄弟姉妹 | 4分の3 |
配偶者の税額軽減では、この法定相続分に遺産総額を掛けた金額と、1億6,000万円とを比べます。子がいる一般的なご家庭なら遺産の2分の1が法定相続分の目安、と覚えておくと判断が早いです。
2.配偶者控除の適用要件
配偶者控除を使うには、戸籍上の配偶者であること、申告期限までに遺産分割が終わっていること、相続税の申告書を提出することの3つを満たす必要があります。

言い換えると、この3つのどれか1つでも欠けると、原則として軽減は受けられません。特に見落とされやすいのが「申告書の提出」です。
- 対象者が戸籍上の配偶者であること。
- 遺産分割協議が相続税の申告期限までに完了していること。
- 税務署へ相続税の申告書を提出すること。
2-1. 対象者が戸籍上の配偶者である
配偶者控除の対象になるのは、戸籍に入っている法律上の配偶者だけです。
内縁関係や事実婚のパートナーは、どれだけ長く連れ添っていても対象になりません。婚姻期間の長さも問われないので、入籍直後でも戸籍上の配偶者であれば適用されます。
正直、ここで揉めるケースは実務でも見てきました。長年連れ添った内縁の方が「妻として相続したい」と希望されても、税額軽減は使えない。冷たいようですが、制度はあくまで戸籍が基準です。
2-2.

配偶者控除は、配偶者が取得する財産が申告期限までに確定していることが前提です。
遺産の分け方が決まっていなければ、配偶者が「いくら取得したか」が定まらず、軽減額も計算できないからです。
遺産分割協議が相続税申告の申告期限までに完了している
原則として、申告期限までに遺産分割が終わっていないと配偶者の税額軽減は受けられません。

ただし、救済策があります。申告期限までに分割が間に合わない場合は、申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付しておくと、後から分割が成立したときに軽減を受けられます。
2-3.
配偶者控除を受けるには、相続税の申告書を税務署に提出することが絶対条件です。
納税額がゼロになる場合でも、この提出を省くことはできません。ここを勘違いすると、本来ゼロで済んだはずの税金を後から請求される恐れがあります。
税務署へ相続税の申告書を提出する

相続税の申告書は、相続開始を知った日の翌日から10か月以内に税務署へ提出します。
配偶者の税額軽減は、この申告に紐づけて適用されます。「税金がかからないなら申告も不要」と思いがちですが、配偶者控除を使う場合は逆で、申告して初めて軽減が認められます。
| 状況 | 申告の要否 |
|---|---|
| 基礎控除以下で課税なし | 申告不要 |
| 配偶者控除で納税額が0円 | 申告が必要 |
基礎控除は「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」で計算します。これ以下なら課税も申告も不要ですが、配偶者控除を使ってゼロにする場合は別物です。
3.配偶者特別控除と配偶者控除は別物
相続税の「配偶者控除(配偶者の税額軽減)」と、所得税の「配偶者特別控除」はまったく別の制度です。

配偶者特別控除は、所得税の計算で配偶者の収入に応じて所得を差し引く仕組みで、年末調整や確定申告で使うものです。相続とは無関係です。
名前が似ているので混同されがちですが、相続税の話をしているときに「配偶者特別控除」と言われたら、それは別の税金の話だと考えて差し支えありません。本記事で扱っているのは、相続税の配偶者の税額軽減のほうです。
よくある質問
配偶者控除でよく寄せられる疑問を、実務でいただいた質問を中心にまとめました。
よくある質問
最後にひとつだけ。配偶者控除で「とりあえず妻が全部相続して税金ゼロ」にすると、その配偶者が亡くなる二次相続で子の税負担が一気に重くなることがあります。目先のゼロに飛びつかず、二次相続まで見据えて分け方を決める。これが、私が現場で一番伝えたい注意点です。
