数次相続とは?通常の相続と異なる3つの手続きをわかりやすく解説

- 数次相続とは、遺産分割が終わる前に相続人が亡くなり、次の相続が重なって発生する状態を指します。
- 相続税の申告期限は通常10か月ですが、申告前に相続人が亡くなった場合はその人の相続人について期限が延長されます。
- 相続登記は2024年4月1日から義務化され、取得を知った日から3年以内に申請しないと10万円以下の過料の対象になります。
- 10年以内に相次いで相続が起きると、相次相続控除で相続税の一部を控除できます。
- 遺産分割協議書は、一次相続と二次相続で別々に作っておくほうが後の登記がスムーズです。
相続 数次の結論

数次相続では「亡くなった相続人の地位を、その人の相続人が引き継ぐ」という考え方が基本になります。
私が税理士事務所で担当した中でも、数次相続は本当に多い。高齢のご夫婦のどちらかが先に亡くなり、遺産分割を後回しにしているうちに残された配偶者も……というケースです。
難しく見えますが、やることは「誰が当事者か」を戸籍で確定させ、相続ごとに手続きを積み上げるだけ。順番に整理すれば必ず処理できます。
1.数次相続とは
数次相続とは、ある人の相続が開始した後、遺産分割が終わる前に相続人の一人が亡くなり、さらに次の相続が始まった状態のことです。

民法に「数次相続」という言葉そのものが定義されているわけではありません。実務で使われる呼び名です。
根拠としては、相続の承認・放棄の熟慮期間の起算点を定めた民法916条が関係します。相続人が承認・放棄をする前に亡くなった場合、その熟慮期間は、亡くなった相続人の相続人が「自己のために相続の開始があったことを知った時」から起算します。
1-1.数次相続における「一次相続」「二次相続」とは
先に発生した相続を「一次相続」、その後に重なって発生した相続を「二次相続」と呼びます。
具体例で説明します。父が亡くなり(一次相続)、相続人は母と長男・長女の3人。遺産分割が終わらないうちに母が亡くなった(二次相続)。
このとき、母が父から相続するはずだった権利は、母の相続人である長男・長女が引き継ぎます。つまり長男・長女は、父の遺産分割にも母の遺産分割にも当事者として関わることになります。
| 相続 | 被相続人 | 相続人 | |
|---|---|---|---|
| 一次相続 | 父 | 母・長男・長女 | 母の地位を長男・長女が承継 |
| 二次相続 | 母 | 長男・長女 |
※上の表は列数の都合で補足を末尾に寄せていますが、要は「母の取り分の話は、母の子である長男・長女が決める」ということです。
1-2.数次相続と混同しがちな相続の形式3選

数次相続と最も混同されやすいのは「代襲相続」と「相次相続控除」です。似ているようで中身がまったく違います。
代襲相続は、相続人になるはずの子が「被相続人より先に」亡くなっているときに、その孫が代わりに相続するしくみ。数次相続は逆で、相続開始の「後に」相続人が亡くなります。死亡の前後が決定的な違いです。
もう一つが相次相続控除。これは10年以内に相続が続いたときに相続税を軽くする制度で、数次相続の「定義」ではなく、あくまで税額計算上の制度です。
| 項目 | 内容 | 数次相続との関係 |
|---|---|---|
| 数次相続 | 相続開始後・分割前に相続人が死亡し相続が重なる | 本体の状態 |
| 代襲相続 | 相続人が被相続人より先に死亡し孫等が相続 | 死亡の前後が逆 |
| 相次相続控除 | 10年以内の連続相続で相続税を控除 | 税額計算の制度 |
2.通常の相続とは異なる、数次相続の相続手続き
数次相続では、一つひとつの手続きが「相続ごと」に二重になり、当事者の確定がより重要になります。

通常の相続なら、相続人調査→遺産分割→申告→登記、と一直線です。数次相続はこの流れが一次相続・二次相続の両方で必要になります。
以下、特有のポイントを手続きごとに見ていきます。実務で「ここでつまずく人が多いな」と感じた順に率直に書きます。
2-1.【数次相続特有の手続き①】相続人調査
数次相続の相続人調査では、亡くなった相続人の戸籍まで遡って取得し、当事者を確定させる必要があります。
集めるべき戸籍が一気に増えます。一次相続の被相続人の出生から死亡までの戸籍に加え、途中で亡くなった相続人の出生から死亡までの戸籍も必要です。
正直、ここが数次相続で一番面倒な工程。私が担当した案件でも、戸籍の取り寄せだけで1〜2か月かかったことがあります。本籍を何度も移している家系だと、複数の市区町村に請求を出すことになります。
遺産分割協議は相続人全員の合意が必須です。一人でも漏れると協議は無効になります。だからこそ戸籍で漏れなく確定させることが出発点になります。
2-2.【数次相続特有の手続き②】相続放棄

相続放棄の熟慮期間は原則3か月ですが、数次相続では起算点が「後に亡くなった相続人の相続人が相続開始を知った時」になります。
民法915条が「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」と定め、916条がこの数次相続のケースの起算点を補っています。
借金がありそうな相続では、自己判断で動かず、3か月の期限内に弁護士・司法書士へ相談したほうが安全です。ここは正直、専門家に頼るべき場面です。
2-3.【数次相続特有の手続き③】遺産分割協議
数次相続の遺産分割協議では、亡くなった相続人の取り分を、その相続人が代わりに話し合いに加わって決めます。

例えば父の遺産について、母が亡くなっていれば、母の取り分は母の子(長男・長女)が当事者として協議します。
気をつけたいのは、一人の人が複数の立場を兼ねること。長男が「父の相続人」かつ「母の相続人」として登場するため、署名押印の整理が紛らわしくなります。
全員の合意が必要という大原則は変わりません。これは法務局の案内でも明示されています。
2-4.【数次相続特有の手続き④】遺産分割協議書の作成
遺産分割協議書は、一次相続と二次相続で別々に作成しておくほうが、後の登記や手続きがスムーズです。
一通にまとめて書くこともできますが、私は分けて作るのを勧めます。理由は単純で、後で相続登記をするときに「どの相続の分割か」が明確なほうが法務局でのやり取りが早いからです。
まとめて書いた協議書は、誰がどの立場で何を取得したのかが読み取りにくく、補正を求められやすい。実務でそこは何度か痛い目を見ました。
2-5.【数次相続特有の手続き⑤】相続税申告

相続税の申告期限は原則として被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内ですが、申告前に相続人が亡くなった場合は、その人の相続人について期限が延長されます。
基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」。数次相続でも、各相続ごとにその相続の被相続人について法定相続人を数えて判定します。二次相続が起きても一次相続の基礎控除が自動で増えるわけではありません。
10年以内に相次いで相続が起きた場合は、前述の相次相続控除で相続税の一部を控除できます。数次相続は連続して相続が発生するため、この控除が効くケースが多いです。
| 項目 | 原則 | 出典の要点 |
|---|---|---|
| 申告期限 | 死亡を知った日の翌日から10か月 | 申告前に相続人死亡で延長 |
| 基礎控除 | 3,000万円+600万円×法定相続人の数 | 各相続ごとに判定 |
| 相次相続控除 | 10年以内の連続相続で控除 | 二重負担の調整 |
2-6【数次相続特有の手続き⑥】相続登記
相続登記は2024年4月1日から義務化され、不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請しなければなりません。

正当な理由なく申請を怠ると、10万円以下の過料の対象になります。数次相続を放置していた家ほど、この義務化の影響を受けやすい。
登録免許税は、相続による所有権移転登記で原則として固定資産税評価額の0.4%です。数次相続で登記を複数回行えば、各登記で課税関係が生じます。
ただし、中間の相続人が一人だけといった条件を満たせば、登記を一度にまとめられる「中間省略登記」が認められる場合があります。条件が細かいので、ここは司法書士に確認するのが確実です。
よくある質問
数次相続でよく一緒に検索される疑問に、実務目線で短く答えます。
よくある質問
最後に一つだけ。数次相続は時間が経つほど不利になります。相続人がさらに増える前に、戸籍集めだけでも今日始めてください。それが一番の近道です。
