二次相続で相続人がいない場合の財産の行き先と手続きを解説

- 相続人がいない場合、相続財産は民法951条により「相続財産法人」になる。
- 家庭裁判所は利害関係人または検察官の申立てで相続財産清算人を選任する。
- 相続人捜索の公告期間は6か月を下回ってはならない(民法958条)。
- 被相続人と特別の縁故がある人は、家庭裁判所に財産分与を請求できる(民法958条の3)。
- 特別縁故者がいない、または財産が残る場合は国庫に帰属する(民法959条)。
私は税理士事務所で約8年、相続税申告のサポートを担当してきました。「相続人がいない」というケースは件数こそ多くないものの、いざ当たると手続きが長く、費用も時間もかかります。この記事では、制度の根拠条文を示しながら、実際の流れを順を追って整理します。
二次相続 相続人 いない場合の結論

相続人がいない二次相続では、財産はいったん「相続財産法人」となり、家庭裁判所が選んだ相続財産清算人が債権の清算や財産分与を行い、残れば国庫に帰属します。
ここでひとつ整理しておきたいのが言葉の使い方です。「二次相続 相続人 いない場合」という検索には、二つの異なる悩みが混ざっています。
ひとつは、二次相続(たとえば父が先に亡くなり、後から母が亡くなるケース)で、母に子も親も兄弟姉妹もいない、つまり法定相続人が誰もいないという「相続人不存在」の問題。
もうひとつは、二次相続では配偶者がすでに亡くなっているため、相続税の計算で使える優遇が減る、という税金面の論点です。
1.相続人不存在とは
相続人不存在とは、戸籍をたどっても法定相続人が一人も確認できない、または全員が相続放棄や欠格などで相続権を失った状態を指します。

法定相続人の範囲は民法で決まっています。第1順位が子、第2順位が直系尊属(親や祖父母)、第3順位が兄弟姉妹です。配偶者はこれらと並んで常に相続人になります。
この誰もが存在しない、あるいは権利を失っているとき、民法951条が動き出します。条文は、相続人のあることが明らかでないときに相続財産は法人とする、と定めています。
つまり「持ち主が決まっていない財産」を、いったん法人という器に入れて管理する仕組みです。正直、ここを理解しておくと後の手続きの意味がスッと入ってきます。
1-1.法定相続人がいない
法定相続人がいないとは、子・直系尊属・兄弟姉妹・配偶者のいずれも存在しない状態です。
二次相続でよくあるのは、配偶者が先に亡くなり、子どももおらず、本人の親も既に他界、兄弟姉妹もいない、というケース。生涯独身だった方や、子に先立たれた高齢の方の相続で実際に起きます。
私が現場で見たのは、本人が「甥に全部渡したい」と思っていたのに、甥は法定相続人ではなかったケースです。兄弟姉妹が既に亡くなっていれば甥姪が代襲しますが、そうでなければ甥は自動的には相続できません。
こうした思い込みのズレが、相続人不存在の落とし穴になります。
1-2.相続放棄で相続人がいない

法定相続人がいても、全員が相続放棄をすれば、結果として相続人不存在になります。
放棄は珍しくありません。被相続人に借金が多い、不動産が負担になる、といった理由で家庭裁判所に申述します。第1順位が放棄すると次の順位へ権利が移り、その全員も放棄すれば、もう受け継ぐ人がいなくなる。
ここで誤解されがちなのが、放棄をしても財産の管理義務がすぐ消えるわけではない、という点です。次の引受け手が決まるまで、放棄者にも一定の管理責任が残ることがあります。
全員放棄で誰もいなくなったときも、相続財産法人として清算人を選ぶ流れに乗ります。
1-3.欠格・排除で相続人がいない
相続欠格や廃除によって相続人が権利を失い、他に相続人がいなければ、これも相続人不存在になります。

欠格は、被相続人を殺害した、遺言書を偽造したといった重大な事由があると、手続きなしで当然に相続権を失う制度です。廃除は、虐待など著しい非行があった相続人について、被相続人が家庭裁判所に申し立てて権利を奪うものです。
正直、欠格・廃除だけで相続人不存在になるケースはかなり稀です。多くは「もともと相続人が少なく、欠格や廃除が重なって誰もいなくなった」という組み合わせで起きます。
2.相続人不存在の場合、財産の行き先
相続人不存在の財産は、遺言があればその指定先、次に特別縁故者、最後に国庫、という優先順位で行き先が決まります。
この順番を表で整理しておきます。実務では「遺言があったかどうか」で、その後の手間がまるで変わります。
| 優先 | 行き先 | 根拠 | ポイント |
|---|---|---|---|
| 1 | 遺言で指定された受遺者 | 遺言(遺贈) | 遺言があれば原則その内容が最優先 |
| 2 | 特別縁故者 | 民法958条の3 | 公告期間満了後に家庭裁判所へ請求 |
| 3 | 国庫 | 民法959条 | 縁故者がいない・財産が残る場合に帰属 |
2-1.遺言書があれば遺言書で指定された人

有効な遺言書があれば、相続人がいなくても、遺言で指定された人(受遺者)が財産を受け取ります。
先ほどの「甥に全部渡したい」というケースは、まさにこれで解決できます。法定相続人でなくても、遺言で受遺者に指定しておけば財産を渡せる。
私が相続人不存在で一番もったいないと感じるのは、生前に遺言さえあれば本人の希望どおりに渡せたのに、それがなかったために国庫へ流れていく財産です。
相続人がいない見込みのある方こそ、遺言の準備を強く勧めます。ここは迷う余地がない。
2-2.特別縁故者に財産分与
相続人不存在が確定した後、被相続人と特別の縁故があった人は、家庭裁判所に財産分与を請求できます(民法958条の3)。

特別縁故者とは、たとえば被相続人と生計を同じくしていた人、療養看護に努めた人、その他特別の縁故があった人を指します。内縁の配偶者や、長く介護をしてきた人が典型です。
注意したいのは請求のタイミング。財産分与は、後で説明する相続人捜索の公告期間が満了した後に請求します。早すぎても受け付けてもらえません。
2-3.国庫に帰属
特別縁故者への財産分与がされない、または分与しても財産が残る場合、その財産は国庫に帰属します(民法959条)。
つまり国のものになる、ということです。実務では、清算人が債権者へ弁済し、特別縁故者への分与も済んだうえで、なお残った財産が国へ引き継がれます。
国庫帰属は、相続人もおらず、遺言もなく、特別縁故者も現れなかった、いわば最終地点です。本人が望んでいたわけでもないのに財産が国に流れるのは、あまり気持ちのいい結末ではありません。
3.相続人不存在の場合の手続きと流れ

相続人不存在の手続きは、相続財産清算人の選任に始まり、債権申出の公告、相続人捜索の公告、特別縁故者への分与、国庫帰属という順で進みます。
全体の流れを表で先に押さえます。なお、かつての「相続財産管理人」は、現行法では「相続財産清算人」という名称が使われます。
| 段階 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 1 | 相続財産清算人の選任(利害関係人・検察官が申立て) | 民法952条1項 |
| 2 | 相続債権者・受遺者への請求申出の公告 | 民法957条 |
| 3 | 相続人捜索の公告(6か月を下回らない) | 民法958条 |
| 4 | 特別縁故者への財産分与の申立て | 民法958条の3 |
| 5 | 残余財産の国庫帰属 | 民法959条 |
①財産管理人の選任
手続きは、家庭裁判所に相続財産清算人(旧・相続財産管理人)の選任を申し立てるところから始まります。

申立てができるのは、利害関係人または検察官です(民法952条1項)。利害関係人とは、たとえば被相続人にお金を貸していた債権者や、特別縁故者として財産分与を受けたい人などが当たります。
清算人が選ばれると、相続債権者や受遺者に対して請求の申出を促す公告を行い(民法957条)、続いて相続人を探すための公告に進みます。この相続人捜索の公告期間は、6か月を下回ってはならないと定められています(民法958条)。
正直に言うと、この一連の流れは半年以上かかるのが普通です。費用面でも、清算人の報酬や官報公告の費用がかかり、財産が少ないと持ち出しになることもあります。手続きを始める前に、弁護士や司法書士に費用感を確認しておくのが現実的です。
よくある質問
相続人がいない二次相続について、検索でよく一緒に調べられる疑問にまとめて答えます。
よくある質問
最後に、現場から一言。相続人がいない見込みなら、生前の遺言が最も効きます。遺言一枚で、渡したい人に渡せるか、国庫へ流れるかが分かれる。手続きの複雑さを知った今こそ、まず遺言の準備を検討してみてください。
