数次相続の遺産分割協議書の書き方|見本付きで注意点を解説

- 数次相続とは、遺産分割や登記が終わらないうちに相続人が亡くなり、次の相続が始まった状態を指す。
- 2次相続の相続人は、亡くなった1次相続人の地位を承継して協議に参加する。
- 協議書は1通にまとめる方法と、相続ごとに別々に作る方法の2種類がある。
- 亡くなった相続人の肩書きは「相続人兼被相続人」、署名する人は「相続人兼〇〇の相続人」と書く。
- 1次相続の協議に2次相続の相続人が一人でも欠けると、その協議書は無効になる。
数次相続の遺産分割協議書の結論

数次相続の遺産分割協議書は、亡くなった被相続人2人分の情報を冒頭に併記し、後から亡くなった相続人に「相続人兼被相続人」と肩書きを付けて作成します。
私が税理士事務所で相続税申告のサポートをしていた頃、この「肩書き」でつまずく家族が本当に多かった。署名欄に普通に名前だけ書いてしまい、法務局で差し戻される。原因はだいたいここです。
数次相続の協議書には、特別な様式の決まりがあるわけではありません。通常の遺産分割協議書に、亡くなった相続人の地位を承継した人を正しく書き込む。それだけです。
数次相続の典型例3つ
数次相続が起きるのは、相続手続きを後回しにしているうちに次の死亡が発生する、という流れがほとんどです。

実務でよく見る順番は、おおむね次の3パターンに分かれます。文章で並べるより表のほうが分かりやすいので、整理しておきます。
| パターン | 起きる流れ | 協議に加わる人 |
|---|---|---|
| 祖父→父の連続死亡 | 祖父の遺産分割が終わらないうちに、相続人である父が死亡 | 祖父の他の相続人+父の相続人(母・子など) |
| 夫→妻の連続死亡 | 夫の相続手続き中に、相続人である妻が高齢で死亡 | 子+妻の相続人(子など) |
| 親→子の連続死亡 | 親の遺産分割協議の途中で、子の一人が死亡 | 他の子+亡くなった子の配偶者・孫など |
どのパターンも共通点は同じ。最初の相続(1次相続)の話し合いが終わる前に、相続人だった人が亡くなる。すると、その人の相続人(2次相続の相続人)が話し合いに加わることになります。
正直に言うと、1番目の「祖父→父」が圧倒的に多い。父が祖父の遺産分割を『そのうちやろう』と放置しているうちに体調を崩す、というケースです。
数次相続の遺産分割協議書の書き方
書き方の中心は、被相続人を2人併記し、亡くなった相続人を「相続人兼被相続人」と表記することです。
冒頭に書く必須項目は、通常の協議書と変わりません。被相続人の氏名・生年月日・死亡年月日・住所・本籍地、合意内容、財産を取得する人、そして相続人全員の署名・住所・実印の押印です。
1次相続の被相続人と2次相続の被相続人を併記する
冒頭には、1次相続の被相続人(例:祖父)に加えて、その後に亡くなった2次相続の被相続人(例:父)の情報も並べて書きます。
父は「祖父の相続人」でありながら、自分自身も「父の相続の被相続人」になる。この二役を表すのが肩書きです。
肩書きと署名欄の書き方
亡くなった相続人(父)の肩書きは「相続人兼被相続人」。その父の地位を引き継いで署名する人(母や子)は「相続人兼〇〇の相続人」と書きます。
たとえば母が署名するなら、署名欄は『相続人兼亡〇〇(父の氏名)の相続人 △△(母の氏名)』という形です。地位を明確に書いておかないと、登記の段階で説明を求められます。
1通でまとめるか、相続ごとに分けるか
作成方法は、1通にまとめる方法と、1次・2次の相続ごとに被相続人別に作る方法の2種類があります。
私の感覚では、関係者が少なく財産もシンプルなら1通でまとめたほうが手間が少ない。逆に、相続人が多く財産の分け方も複雑なら、被相続人ごとに分けたほうが後で読み返しやすいです。
数次相続は相続人の地位を承継

数次相続では、2次相続の相続人が、亡くなった1次相続人の「遺産分割に参加する権利(地位)」をそのまま引き継ぎます。
つまり、父が祖父の遺産について持っていた『話し合いに加わる権利』は消えずに、父の相続人へ移る。これが「地位の承継」です。
ここが数次相続のいちばん大事なポイントだと、私は考えています。父が亡くなったから祖父の相続から外れる、のではない。父の取り分を決める権利が、母や子に移って継続するのです。
だからこそ、戸籍の取り方も変わります。1次相続の被相続人だけでなく、後から亡くなった相続人(父)の出生から死亡までの戸籍も取り、その相続人を全員確定させる必要があります。
数次相続の遺産分割協議書の見本(書式)
見本の核は、被相続人欄の併記と署名欄の肩書きの2か所です。ここさえ押さえれば、本文の財産の書き方は通常の協議書と同じです。

イメージしやすいように、冒頭部分と署名欄の書き分けを表にしました。
| 記載箇所 | 書き方の例 |
|---|---|
| 被相続人(1次) | 被相続人 〇〇(祖父) 生年月日・死亡年月日・本籍・最後の住所を記載 |
| 被相続人(2次) | 相続人兼被相続人 〇〇(父) 生年月日・死亡年月日・本籍・最後の住所を記載 |
| 署名欄(父の地位を承継した母) | 相続人兼亡〇〇(父)の相続人 △△(母) 住所・実印押印 |
| 署名欄(他の1次相続人) | 相続人 □□ 住所・実印押印 |
財産の取得者を書く本文部分は、「誰が、どの財産を取得するか」を具体的に書きます。不動産なら登記簿どおりの地番・家屋番号を写すこと。ここを略すと登記で通りません。
見本テンプレートは士業サイトでも公開されています。自分のケースに合うひな形を選んでください。
数次相続の遺産分割協議書で注意すべきこと
最大の注意点は、相続人全員が実印で押印し、各自の印鑑証明書を添付することです。一人でも欠ければ、登記も名義変更も止まります。
全員の実印と印鑑証明書がいる
協議に参加した相続人全員が実印で押印し、印鑑証明書を添付します。これは法務局での相続登記、金融機関での払い戻しの両方で提出を求められます。
必要書類は1次・2次の両方そろえる
戸籍は2人分。1次相続の被相続人だけでなく、2次相続の被相続人の出生から死亡までの戸籍も必要です。集める枚数が一気に増えます。
| 書類 | ポイント |
|---|---|
| 被相続人の出生~死亡までの戸籍謄本等 | 1次・2次の被相続人いずれも必要 |
| 相続人全員の現在戸籍謄本 | 地位を承継した2次相続人も含む |
| 相続人全員の住民票の写し等 | 住所の証明として添付 |
| 相続人全員の印鑑証明書 | 実印押印とセットで必須 |
| 登記簿謄本・固定資産税評価証明書 | 対象不動産の特定と税額計算に使用 |
手数料や期限に『数次相続だけの特例』はない
正直、ここは誤解している人が多い。数次相続だからといって、特別な手数料や独自の申告期限が加わるわけではありません。
遺産分割協議書の作成自体に手数料はかかりません。相続登記の登録免許税は固定資産税評価額に基づく標準的な計算で、数次相続だけの加算はありません。相続税の申告期限も一般と同じ扱いです。
まとめ

数次相続の協議書は、被相続人2人の併記と「相続人兼被相続人」「相続人兼〇〇の相続人」という肩書きさえ外さなければ、難しい書類ではありません。
つまずきポイントは決まっています。肩書きの書き忘れ、戸籍の取り漏れ、そして2次相続人の参加漏れ。この3つを潰せば、登記も申告もスムーズに進みます。
私が現場で一番伝えたいのは、放置するほど面倒になるということ。相続手続きを先送りにすると、こうして死亡が重なり、関係者も書類も雪だるま式に増えます。気づいたら早めに着手するのが、結局いちばん楽です。
数次相続の遺産分割や相続手続きなら当事務所までご相談ください!
数次相続は、戸籍の収集と肩書きの整理に手間がかかるぶん、専門家に任せると一気に進みます。

特に相続人が多い場合や、被相続人ごとに協議書を分けるか判断に迷う場合は、最初の方針決めだけでも相談する価値があります。署名を集めた後で書式の誤りに気づくと、全員にやり直しをお願いすることになるからです。
相続税申告まで絡むなら、税理士に分割と申告をまとめて任せたほうが、二重の手間を避けられます。
ご依頼は、各オフィスへ直接お問合せください。
具体的な手続きの進め方や費用は、お住まいの地域を担当する各オフィスへ直接お問い合わせいただくのが確実です。
数次相続は事案ごとに相続人の数も財産の構成も違います。戸籍を見てからでないと正確な見積もりは出せないので、まずは現状を伝えるところから始めてください。
当サイト内の相続・遺言コンテンツまとめ

遺産分割協議書の書き方は、数次相続以外にも押さえておきたい論点が多くあります。
通常の遺産分割協議書の作り方、相続登記の流れ、相続税申告の準備など、関連するテーマは当サイト内の各記事で詳しく解説しています。あわせて読むと、全体像がつかみやすくなります。
数次相続とは、相続開始後にまた相続が発生した場合
数次相続とは、被相続人が亡くなった後、遺産分割や相続登記が終わらないうちに相続人が死亡し、次の相続が始まった状態をいいます。

似た言葉に「代襲相続」がありますが、これは別物です。代襲相続は、相続が始まる前にすでに子が亡くなっていて孫が代わりに相続するケース。数次相続は、相続が始まった後に相続人が亡くなるケースです。
言い換えると、数次相続では亡くなった相続人は『いったん相続する権利を取得した』という点が違います。だからその権利が、さらに次の相続人へ承継されるわけです。
