数次相続とは?代襲相続との違いと相続手続きの進め方を解説

- 数次相続とは、遺産分割が終わる前に相続人が死亡し、次の相続が重なって発生した状態のこと。
- 相続税の申告期限は、亡くなった相続人の分について延長される(原則10か月から猶予される)。
- 相続税の基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で、数次相続でも各相続ごとに計算する。
- 10年以内に相続が重なった場合、相次相続控除で前回課税分の一部を差し引ける。
- 相続登記は取得を知った日から3年以内が義務。数次相続では一次・二次それぞれの登記関係を整理する。
数次相続の結論

数次相続でまず押さえるべきは、「一次相続」と「二次相続」を切り分けて、それぞれ別々に手続きを進めることです。
ここを混同すると、誰が何を相続したのか分からなくなります。実際、遺産分割協議書を1枚にまとめようとして収拾がつかなくなった事例を、私は何度も見てきました。
1.数次相続(すうじそうぞく)
数次相続は、法律で定められた独立の制度名ではなく、相続手続きが終わらないうちに相続人が亡くなり、相続が連鎖した状態を指す説明用語です。

たとえば父が亡くなって、その遺産分割がまだ済んでいないうちに母も亡くなる。このとき父の相続(一次相続)と母の相続(二次相続)が重なります。これが数次相続です。
法務省の相続登記義務化の解説でも、相続人が死亡した場合の登記手続きが論点として扱われています。
1-1.数次相続(すうじそうぞく)とは
数次相続とは、被相続人の遺産分割や相続手続きが完了しないうちに相続人が死亡し、次の相続が発生した状態のことです。
ポイントは「最初の相続が未完了のまま、次の相続が起きている」という点。先に亡くなった人を一次相続の被相続人、後から亡くなった相続人を二次相続の被相続人と呼びます。
正直に言うと、この言葉は税理士や司法書士の間でこそ通じますが、ご家族にはなかなかピンと来ません。私はいつも「相続の手続きが、もう一回起きてしまった状態」と説明していました。
1-2.数次相続の事例

代表的なのは、父の相続中に母が亡くなるケースと、相続人である子が亡くなるケースの2つです。
具体例を挙げます。父が死亡し、相続人は母と子2人。父の遺産分割協議をしている最中に、母が亡くなった。すると母の財産(父から相続するはずだった分も含む)について、子2人で改めて相続することになります。
| パターン | 一次相続 | 二次相続 | 結果 |
|---|---|---|---|
| 配偶者が死亡 | 父が死亡 | 遺産分割前に母が死亡 | 母の取り分を子が再度相続 |
| 相続人の子が死亡 | 親が死亡 | 遺産分割前に子が死亡 | 子の配偶者・孫が相続人に加わる |
二次相続で配偶者や孫が新たに加わると、関係者がぐっと増えます。協議の難易度が跳ね上がるのはこのパターンです。
1-3.代襲相続との違い
数次相続と代襲相続の最大の違いは「相続人が亡くなったタイミング」です。

代襲相続は、相続の開始時点で、本来相続人になるはずだった人がすでに亡くなっているケース。その子(孫など)が代わりに相続します。
一方、数次相続は相続開始の「後」に相続人が亡くなる。つまり、一度は相続人になっていた人が、その後に死亡している点が決定的に違います。
| 項目 | 数次相続 | 代襲相続 |
|---|---|---|
| 死亡のタイミング | 相続開始の後に相続人が死亡 | 相続開始の前に相続人が死亡 |
| 相続人の地位 | 一度は相続人になっている | 最初から相続しない(代わりに子が相続) |
| 相続の数 | 相続が2つ発生 | 相続は1つ |
2.数次相続の場合の相続手続き
数次相続の手続きは、戸籍で相続人を確定し、相続ごとに遺産分割協議書を作り、相続登記をする、という流れで進めます。
普通の相続と作業項目は同じですが、それを「一次相続」「二次相続」で別々に二度行うイメージです。手間は単純に倍近くになります。
2-1.戸籍謄本で相続人を確定させる

最初にやるべきは、一次相続と二次相続、それぞれの相続人を戸籍謄本で確定させることです。
配偶者は常に相続人になり、その後に子、直系尊属(親など)、兄弟姉妹の順で法定相続人が決まります。数次相続では、この確定作業を2回行う必要があります。
実務で一番つまずくのがここでした。二次相続で新たに加わった相続人の戸籍を集め忘れると、後から協議書を作り直すハメになります。
2-2.遺産分割協議書は別々に作成したほうがよい
遺産分割協議書は、一次相続用と二次相続用を別々に作成することを強く勧めます。

1枚にまとめることも理論上は可能です。ただ私の経験上、まとめると「誰が誰から何を相続したか」が読み取れなくなり、後の手続きで混乱します。
特に不動産の登記や金融機関の手続きでは、相続の流れが明確に書かれていないと差し戻されることがあります。最初から分けておく方が、結局は早い。
2-3.相続登記をする
不動産を相続したら、取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければなりません。
これは2024年から義務化されたルールです。数次相続では、一次相続分と二次相続分それぞれの登記関係が発生しうるため、整理が重要になります。
登記の際にかかる登録免許税は、不動産の固定資産税評価額をもとに計算され、相続による所有権移転登記の税率は原則として評価額の0.4%です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申請期限 | 取得を知った日から3年以内 |
| 登録免許税 | 固定資産税評価額の0.4% |
| 数次相続での注意 | 一次・二次それぞれの登記関係を整理 |
3.数次相続の場合の相続税申告の5つの注意点

数次相続の相続税で押さえるべきは、申告義務の引き継ぎ、申告期限の延長、基礎控除、相次相続控除、各種特例の5点です。
このうち、知らずに損をしやすいのが申告期限の延長と相次相続控除です。順に見ていきます。
| 注意点 | ポイント |
|---|---|
| 申告・納税義務の引き継ぎ | 亡くなった相続人の申告義務は次の相続人へ |
| 申告期限の延長 | 亡くなった相続人の分は期限が猶予される |
| 基礎控除 | 各相続ごとに計算。重なっても増えない |
| 相次相続控除 | 10年以内の相続なら前回課税分を一部控除 |
| 配偶者の税額軽減・小規模宅地等の特例 | 適用要件を相続ごとに確認 |
3-1.申告と納税義務が引き継がれる
一次相続の相続税申告をする前に相続人が亡くなった場合、その人の申告・納税義務は次の相続人(二次相続の相続人)に引き継がれます。

相続税の申告期限は、原則として被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内です。
ただし、引き継いだ相続人については、この期限が延長されます。亡くなった相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内に延びる扱いです。あわてて短い期限に合わせる必要はありません。
基礎控除については、数次相続でも各相続ごとに「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算します。相続が重なったからといって控除枠が合算されたり、増えたりすることはありません。
そして見落としやすいのが相次相続控除です。10年以内に相次いで相続が起きた場合、前回の相続で課税された相続税額のうち、経過年数に応じて1年につき10%ずつ逓減した額を、今回の相続税額から差し引けます。
これは前回の相続で相続税が課税されていることが前提の制度です。短期間に同じ財産へ相続税が重なる負担を和らげる仕組みなので、数次相続では使えるか必ず確認してください。
よくある質問
数次相続でよく寄せられる質問をまとめました。
よくある質問
最後に実務担当として一言。数次相続は「面倒だから後回し」が一番こじれます。相続人が増える前に、まず戸籍を集めて全体像を把握する。ここから動き出すのが、結局いちばん早くて安全です。
